黒人の命を粗末にするな!

 ちょっと古いけど、2015年、16歳の黒人の女の子がソーシャルメディア上に 公開した動画が、全米で大きな反響を生んだ。 彼女は女優であり活動家、アマンドラ・ステンバーグ。


 
https://wired.jp/special/2016/girl-power/   

「黒人のカルチャーがこれほど愛されているこの国で、 黒人はなぜこんなにも差別されているのだろう?」

 心が震えた。
例えば、音楽の分野。ミシシッピ・デルタの綿花地帯の黒人奴隷たちのワーク・ソングからブルース、ジャズ、ロックンロール……そしてロックになった歴史を考え、ここから黒人の血を抜くと、アメリカの音楽ってほとんどなくなる。

その一年後、ビヨンセの妹でもあるソランジュ・ノウルズ(独立系音楽家)がアマンドラをインタービューしている。(『Teen Vogue』2016年2月号)
 ソランジュ自身のコメント……

「黒人の女の子たちには、自分たちだけに通じる秘密の言語のようなものがある。『おまえたちの居場所は谷底だ』と言い含めようとする世の中で、いくつもの山や川を乗り越えて生きていくことを運命付けられた女の子たち──。彼女たちは、若くしてそれを知ってしまう。誰も口にはしないけれど、そんな声がはっきりと聞こえる。それは例えば、縮れ毛をまるで咲き乱れる花のように膨らませた美しいヘアスタイルで、堂々と胸を張り、颯爽と部屋に入っていくとき。たとえ周りの雑音をシャットアウトしても、決して頭から消えないリズムのように、その声はどこまでもついてくる」

 ……と語り、アマンダも全く同じだと言っている。
もちろん、この「黒人の女の子たち」というのを「黒人の男の子たち」と置き換えても、状況はまったく同じだ。つまり法律はともかくとして、〝制度的差別〟はしっかりとしたたかに残っているということだ。

アメリカの公民権運動の指導者として非暴力抵抗運動の先頭に立って闘ったキング牧師が19681年に志半ばで凶弾に倒れてから52年経っても、黒人の状況はこうだ。彼が残した言葉“I have a dream.”の夢は夢のままである。

2012年2月にアフリカ系アメリカ人のティーンエイジャーが自警団員に射殺され、その自警団員が無罪になったことをきっかけに、「ブラック・ライヴズ・マター 」( Black Lives Matter :BLM)は組織された。
そして、今年ミネアポリスの警察官が黒人男性ジョージ・フロイドを窒息死させた。 (後手に手錠を掛けたフロイドを警官は膝で首根っこを地面に押しつけ、〝息ができない〟ともがくのにも拘らず、通行人の〝やめろ!〟という言葉にも平然と9分間押さえつけたまま。膝を離したときにはフロイドはすでに死んでいた。これは殺人ですらなく家畜の〝屠殺〟である。)

この事により、BLMが全米的……そして、世界的な運動になった。
だが、白人警官による黒人への暴行はまた起こった。この8月23日ウィスコンシン州ケノーシャで警察官が黒人男性ジェイコブ・ブレークへ至近距離からの背後から7発発砲。彼は下半身不随となった。

このmatterという言葉は範囲が広く深い。「黒人の命は大切」ではちょっとペラペラしている。訳し方では「黒人の命を守れ」「黒人の命を軽視するな」「黒人の命を粗末にするな」「黒人の命にも価値がある」「黒人の命はいつだって問題だ」などになるし、これらを全て包含しているのだろう。つまり、第二の「公民権運動」と言ってもいいのだろう。
 明示はされてはいないが、BLMが「反警察」を包含していることは明らかなことだろう。統計でも「黒人男性は、白人男性より警察に殺害される可能性が2.5倍高い」と出ている。

https://cubeglb.com/media/2020/07/03/black-live-matters-statistics/



大坂なおみ選手がBLMのマスクで試合に登場してきた。 「黒人女性としては、テニスをしているのを見るよりも、すぐに気をつけなければならない重要な事柄があるように感じます」と。 

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