量子力学

【こんな話】

パーティでたまたま隣り合わせになり雑談をしたのが、フリーのアナウンサーなどをやっているという女性。
彼女はどこをどう突いても文科系でしかないのだが、ゴリゴリの理科系の男性とデートをしたときの話をしてくれた。
(アラサー女子には結婚の“隠れ候補”マーケットとして理科系大学院男子が結構な人気という話は聞いたことがある。調教し易いと……。)

 「で、食事しながらだったんですけど、彼はずっと量子力学の話だったの、3時間も……」

「うわっ!そりゃ大変だ。難し過ぎてつまらなかったんじゃない?」

「ううん。面白かった」
「へえ〜どこら辺りが……」

「彼が一所懸命にしゃべるのが、可愛いのよ」

「あらら……」

「あんなに目を輝かして情熱を傾けて話されちゃうとドキドキするのよ」

「量子力学自体はどうだった?」

「それはいいの。彼が力込めるタイミングで、すご〜い!!って言ってやればいいんだから。凄い!ってことでは間違いはないんでしょう?」

「まあ、そうなんだけどね……」


 「女族」って凄いよね。大概の女の人は男をナメている。能書きこいて、演説して、正義とかを振りかざし、立場とか志とか思想といったどうでもいいことに血祭りを上げ、挙げ句の果てにまったく大したことなんかできない「男という種族」にタカを括っている。

 「いろんな生意気言ってもね、私がお前のおしめを換えてあげたんだよ」という母親の肝の座り方と繋がっているのだろうと思う。つまり、アレだ……
「いろんなゴタク並べてんだけど、あんたらって子ども産めるの?」という“認識論”というか“見切り”に勝てるものってそうそうない。

「量子力学のものすごさが解らないのは、量子力学を理解できないからだ」って言葉に男はムムッと多少とも焦りの気持ちを持ったりするが、彼女たちからすれば“ちょこざいな!”っていうハナクソ程度のことらしい。

その日もまた女性が偉く見えた。 

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