黄禍論 2020.03.30 13:55(「フン族」の人馬一体の戦闘)コロナ・ウイルス(COVID-19)跋扈の勢いが止まらない。あれよあれよのうちにアメリカでも蔓延の極みになってしまった。このままでは死亡が20万人行くかも……という予測さえある。 それに伴って、アメリカでのアジア系アメリカ人やアジア人への人種差別も激しくなってきている。これはトランプ大統領が恣意的に「中国ウイルス」と連呼することも大きく作用している。普通のアメリカ人にとって中国人も日本人も韓国人もタイ人も見分けはつかない。要するにアジア人もしくはそれらしい顔つきの人がターゲットになる。(われわれもオランダ人、ベルギー人、ドイツ人、イギリス人の区別なんて出来ないし……) このコロナの初期から気にしていたのは、「黄禍(Yellow Peril)思想」がぶり返さないか?ということだったが、結果はやはりなァ……と思っている。 日本が「日清戦争」の勝利などで中国大陸への野望を隠さなくなったくらいのとき、ドイツ帝国の皇帝ヴィルヘルム2世がブレーンにgelbe Gefahr(「黄禍」)という言葉を作らせ、それと、『ヨーロッパの諸国民よ、諸君らの最も神聖な宝を守れ』という寓意画を画家に描かせて、それで煽った。ヨーロッパの中でのドイツのポジションを引き上げるための戦略の一環ではあったのだが。 だとしても、火のないところに煙を立てたのではない。 西暦430年頃、ヨーロッパは東方の遊牧民族「フン族」に散々蹂躙された。その異形の人々の人馬一体と化し、騎乗弓射するという激しくて鮮やかな機動力。なんにしても、軍事力に圧倒的な差があった。 ヨーロッパの人々は今まで受けたことがない暴虐と殺戮の記憶を子々孫々受け継いできている。それゆえ、彼ら西洋人には東方から民族に対しての畏怖心、警戒心が通奏低音でずっと鳴ってきたのだ。 「……彼らの凄まじい顔付きがとてつもない恐怖を引き起こし、相手を恐ろしさのあまり逃げ出させた。浅黒い見た目が恐ろしかったのである。それは、いわば形を成していない塊のようなものであり、顔ではない。そこにあるのは、眼というより点のような穴である。……」 (ヨルダネス『ゴート人の起源と行為』) このようにHunに蹴散らされ弓矢で貫かれたことを経験した民族の子孫は、泣き止まない子に「黄色の悪魔がくるぞ!」と脅して泣き止ませると聞いたことがある。 〝目というより点のような穴〟が怖い。 次はチンギスハンのモンゴルである。西暦1348年から。 これまた地球外生命体エイリアンが襲撃しにきたようなものだった。どうしょうもないほどの圧倒的な軍事力の違いだ。弩(いしゆみ)や投石機、火薬を使用して石や鉄の火球を撃ち出す大砲、火炎放射器まで装備していた。 「馬のひづめの音がとどろき、もろい地面を、揺るがす。彼らはやってきて、壊し、燃やし、殺し、奪ったものを束ね、去っていった」 (『世界征服者の歴史』) モンゴル人のプラハ襲撃を生きのびた人の言葉である。モンゴル人に仕えた歴史家ジュワイニーは、自分の著作のすべてがこの二行で描写されているし、当時の人々の恐怖のすべてがここに凝縮されていると語っている。彼らもまた極めて残虐だったとされているが、異民族同志の戦だからそうはなる。加えて、もう一つ理由はあると思う。彼らは遊牧を生産様式としていた。それをやめて騎馬民族として働くのだから、「遊牧」の代わりに「略奪」と「搾取」が必然的に生産様式にならざるを得ない。それだけのことと思う。羊じゃなく人間から収奪する。 加えて、もう一つある。ある学者が言っているのだが、しかと確証は得られなかったこと。つまり、彼らモンゴロイドがやって来たあとのヨーロッパに必ず「ペスト」が猖獗を極めているということ。ヨーロッパ全体で一億人ほど死んでいる。 チンギスハンの長男の子孫が跋扈して、ロシアを削るようにして建国したのが「金帳汗国」(ロシアは「タタールのくびき」と忌み嫌ったが……)だが、この国は結局「ペスト」で滅びた。 どうやら「ペスト」のホームタウンはオリエントにあるみたいで、「シルクロード」を西進してやってくる。 この「ペスト」も「コレラ」も絶滅したわけではないということを改めて気づかされた。面倒なことに、それらの「疫病」のグループに、このインフルエンザの新型COVID-19が新たに加わったということを覚悟するべきなのだろう。 そんな古の記憶を持っているのか、いないのか……、このコロナ騒ぎで、欧州のイギリス、フランス、オランダなどでアジア系に対する差別や嫌がらせが発生しているし、その欧州から移って行ったアメリカや豪州でも同様に発生して来ている。これらのことは「黄禍」とは別で、〝弱者から弱者への攻撃〟のような気もする。0コメント1000 / 1000投稿2020.04.13 02:33パンデミック2020.03.21 11:12サンディエゴ・フリーウエイ砕け散ったプライドを拾い集めてことば、いい話、ワロタ、分析・洞察、人間、生き物、身辺、こんな話あんな話、ショート・エッセイ、写真、映像……などフォロー
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