落ちてゆく男


「フォーリングマン」って言うのだそうだ。

2001年9月11日だから、もう19年も経ってしまっている。 
翌年の2002年にはWTC跡地の「グラウンド・ゼロ」と
そこに建てられてあった「鉄の十字架」も見ている。
だが、なぜかこの「落ちる男」は初めて見た……と思う。

「フォーリングマン」という名前がつけられているが、

具体的な人物名は公開されずに「無名」のままなのだ。

つまり、自殺が反・キリスト教行為なので、
積極的に誰であるかを特定することを憚っているのです。 
飛行機が突っ込んだ階より上にいた人々は、
逍遥としてトレード・センターとともに焼け死ぬことが、
キリスト教の教義に適うものなのか?

この「フォーリングマン」は、人間としての尊厳を保ったまま、
確かな意思で落下していっているように見える。
つまり、
この「落ちてゆく男」は「聖人」になって落ちていっている
……と思う。あの9.11の悲劇を後世の人々へ伝えんがために。

それゆえ、人々はこの写真を観たら、身動きができなくなる。

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