昼下がりの中途半端な2時半ころ……
ホテルの奥まったコーヒーハウス。
東に開いたウィンドーから冬枯れの庭が見える。
その明るさでちょっと逆光気味のなかを
まだ若さが十分に残っている30代らしい女性が
文庫を読んでいる。
テーブルの上には紅茶とスコーン
そしてデボンシャークリーム。
そこだけが異なった風が流れている。
「私は美しい」と言い切った“横顔のバーバラ”のように……
ショートに纏めたヘアスタイル。
きれいに組まれた脚も、
ティーカップへ唇を持っていく仕草も、
脇の椅子に置かれた由緒正しきバッグも、
全てが彼女の謀りごと。
自分は美しいことを十分に知っていて、
ボクが見ているのも十分に知っていて。
先ほどほんのちらっと視線をこちらへ一瞥させただけで、
“もう二度とあなたには視線を配達しない”
という決意を
横顔に張り付かせて文庫を読んでいる。
その文庫が『イェイツ詩集』だったら、
……どうしよう。
(完)
0コメント