冬至の空はすみのやうにくろい

<三島由紀夫8歳の頃の作文>

火鉢のそばで猫が眠つてゐる。 

 電灯が一室をすみからすみまでてらしてゐる。 

 けいおう病院から犬の吠えるのがよくきこえる。 

 おぢいさまが、 

 「けふはどうも寒くてならんわ」
 とおつしやつた。
 冬至の空はすみのやうにくろい。
 今は七時だといふのにこんなにくらい。
 弟が、
 「こんなに暗らくつちやつまんないや」 といつた。





 

0コメント

  • 1000 / 1000

砕け散ったプライドを拾い集めて

ことば、いい話、ワロタ、分析・洞察、人間、生き物、身辺、こんな話あんな話、ショート・エッセイ、写真、映像……など