【wording】
「怪物と闘う者は、その過程で自らが怪物と化さぬよう心せよ。おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」
(フリードリッヒ・ニーチェ:『善悪の彼岸』)
▶︎ドイツの古典文献学者、哲学者。
怖い言葉である。
背筋が凍るような怖さがありながら、この意味する所をよく分かっているというわけでもない。
ニーチェは45歳のときに発狂して、12年間病院にいたままで死んだ。その短い人生の間で、「デカタンス」、「ニヒリズム」、「ルサンチマン」などなどの新たな数々の概念を提示し続けた〝超人〟である。この天才はつねに自分の哲学を更新し、自分の概念を螺旋的に上昇発展させていった人である。浅学非才の身としては、とても追いつけるものではない。
冒頭のものは多分、「分析に没頭しているうち、相手の考えが理解できるようになる。
その理解の度が過ぎてしまうと、相手に洗脳されてしまい、自分も怪物になってしまう」ということなんだろうと思う。
これを解釈するための鍵を呉れた人がいる。つまり、「戦争はどちらにとっても正義である」というヒントだ。
そういえば、『クレヨンしんちゃん』が「正義の反対は悪ではない。もうひとつの正義なんだな」と言っていた。つまり、それぞれのサイドはオノレを「正義」と信じ、相手のサイドを「怪物」となじる。そして、オノレもその「怪物」になっている。
では、さらに怖い「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」はどうする?
暗い深淵から覗いてくる眼が怖い。
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