(映画『老人と海』)
【wording】
18歳位の時に神奈川の場末の映画館で『老人と海』を観た。
正しくタイトル通りで映画の99%がサンチャゴという老漁師(キャスト:スペンサー・トレーシー)と海だけ。だが惹きつけて飽きることは全くなかった。
それから随分経ってから、改めてアーネスト・ヘミングウエイの原作を読んだ。
そのサンチャゴは、4日もの格闘の末に巨大なカジキマグロを仕留め、自分の小舟の船腹に括りつけて寄港しようとする。が、すぐにサメに嗅ぎつけられてカジキマグロを食いちぎられる。その最初の攻撃を撃退した直後にこのセリフを吐く。
「人間は負けるように造られてはいない。殺されるかもしれないが、負けはしないんだ」
だが、血の匂いで次から次へと襲ってくる鮫にカジキマグロは段々食いちぎられていく。サンチャゴは、最後の最後までサメ達と闘い続ける。港に帰って着たサンチャゴの船が舫ってある。その船腹に巨大なカジキマグロの骨がくくりつけられてある。……魚を食べるのが上手な人のサンマの頭と骨だけが残った“作品”の巨大版が。
これが映画での最後に近いシーンだったと思う。
このカジキマグロの巨大な骸骨がサンチャゴ爺さんの死闘、プライド、悲しみなどを凝縮して波にゆっくりと揺れていた。
冒頭の言葉はもちろんヘミングウエイのライフスタイルだと思う。
だが、怪我や病を得たことはあっただろうが、彼はショットガンで自殺した。
「負けた」のだ。
0コメント