大黒さまと観音さま


故郷の北海道に帰るたびに厄介になるお宅がある。そこのご主人が高校同期の人。奥方は神戸生まれの人。 彼は大黒さま。そして彼女は観音さま。そう言っても誰一人として文句は言わない。(もしくは言わせない。)

二人とも笑顔が似合う夫妻で、共にウエルカムがとても暖かくて、ホスピタリティに厚い。 天然自然にみんなが集まる場所になつてしまっている。まるで、キレイな水が渾々と湧き出ているオアシスであり、はぐれ鳥や渡り鳥達が羽根を休める止まり木でもある。

最初に彼ら夫妻に会った時に、奥方にこっそりインタビュー。

「彼のことが可愛くて可愛くてしょうがないのでしょ?」
「はい?」
「いや、だから、彼が何しても許せてしまうのでしょう?」
「ま、そうですね」

ある時のホームパーティのあと、奥方がキッチンで後片付け&洗い物をしているときに、彼が彼女に言っているのを聞いてしまった。

 「ボクの友だちのために料理をはじめ色々やってくれてありがとう」

盗み聞いた方が、雷に打たれたようになった。後ほど奥方に訊いたら、その言葉はパーティの後は必ず言ってくれると言っていた。結婚して50年経っていてもこんな風なの?

また違う機会で、やはり洗い物をしている奥方の背中に向かって、

「えーと、何を手伝えばいい?」

彼の丸まっちい体は「やさしさ」がパンパンに詰まっているに違いない。 参ったな……。

泊めてもらった朝、6時過ぎにキッチンに行ったら、彼がレタスやトマトを刻んでサラダを作っていた。

「奥方は?」
「もうそろそろ起きてくるんじゃない?」
ふ〜む。

それにさらに果物やウインナーも加えて、テーブルに並べた。そして5種類くらいのドレッシング取り出し、「お好きなものをどーぞ」と。
こんなゴージャスなサラダは食べたことないな……と思っているところへ、奥方が「おはようございます」とジョインしてくる。

これらのどれ一つも家人にはレポートできないでいる。
藪蛇になっちゃうから……
本当に困った人だ。

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