日本ではあまり知られていないが「データ・サイエンティスト」の創始者の一人とされているジェフリー・ハマーバッカーの言葉。
アメリカの最優秀な理数系の学生が卒業して目指すのが、
①ウオール・ストリートの「クオンツ」として高収入(初任給で3千万円近く)を目指すか
②実力主義で不安定なシリコン・バレーに飛び込んで一獲千金に賭けるか
の2つだとすれば、ジェフ・ハマーバッカーは大変シンボリックな人物だ。
彼は2005年にハーバードの数学を出て、ウオールストリート金融業界の〝クオンツ〟をやり、ザッカーバーグに口説かれてシリコンバレーの Facebookへ参加し、そこを2008年に去った4年弱でこの2つとも経験している。
ハマーバッカーがFacebookの「データ・サイエンスト」として取り扱わなければならなかったデータは<10億人×1000ページ>にもなり、ウオール・ストリートでのものを遥かに凌ぐ「ビッグデータ」であった。年齢、性別、居住区、収入ごとに分類、分析などのデータ整理し、数学と「アルゴリズム」でどう使っていくのかを完成させた。
(今現在でも彼のアルゴリズムでFacebookは動いている。)
冒頭の言葉の意味するところは、Google,Facebook,Twitterなどの消費者向けインターネット企業は広告枠を収入源としている。ということは、コンピュータ・サイエンティストの優秀な頭脳が創造したものが、結局はターゲット型オンライン広告に向けてばかり消費されているという失望感だった。彼はそれに我慢ができなくて、Facebookで働き始めて2年ほどで去った。
現代社会で最も将来有望な人たちは「アルゴリズム」を作り出せる人たちだと言っても過言ではない。彼らは「アルゴリズム」を作り出して莫大データを解析し、何百万人をも識別し、今まで考えもしなかったタスクを容易に達成して来た。
ただ、テクノロジィは特殊才能を持った人々から始まるのだが、そのテクノロジィを大衆にまで拡げた人が巨万の富を手にする。例えばマーク・ザッカバーグやジェフ・ベゾスのように……。
一方で、「アルゴリズムが世界を支配する」ことを危惧する声は多いのも確かだ。まあ、「パンドラの箱」だ。蓋を不用意に開け、数多の厄災が飛び散ってしまった。だが、箱の底にはまだ「希望」とか「期待」がたっぷりと詰まっている。
FBを離れた後のジェフは「疾患のモデル化と創薬のために科学的データ」という「ビッグデータ」の統合とその「アルゴリズム」の開発に傾倒している。喩えて言えば、〝ゲーム会社がユーザーに<購入>ボタンを押させるのと同じように、癌の研究者が気軽にアクセスできるようなもの〟を作りたいとしている。彼のコンセプトと伝えられる「真に世界を変えられることは何か?」のアンサーの一つだし、「パンドラの箱」の底の「希望」だと思う。
†クオンツ:Quantitative(数量的、定量的)から派生した言葉で、高度な数学的手法を用いてさまざまな市場を分析したり、さまざまな金融商品や投資戦略を分析したりすること、または、その分析をする人を指す。
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