ポルトガルの軍隊

【こんな話】

The Jellyfishという写真集を出しているクラゲの写真家の鈴木朱紀子さんが、コラムで「クラゲには脳がない。無意識で漂っている」ってあった。まあ、99%が海水なわけだから、そのまま「状況」でしかないわけだ。ま、人間も65%くらいは海水に過ぎないのだから、同じく「状況」かも。
それにしても、およそクラゲというのは植物なのか動物なのかさえよく解らない。
赤ちゃんの頃には海底の岩などに太めの土筆のように生えている。(まあ、イソギンチャクと近い種だから、ソレね。)それがツクシの節一つ一つが剥がれるようにして海面へ浮き上がるのだが、海面近くでその円盤状のものが上下がクルリ!とひっくり返って「クラゲに成る」。そのドキュメンタリーを観ているこちらはそれに狼狽させられる。

それが、「カツオのエボシ」になるとさらに困惑の度合いは増す。この画像のクレジットにも書いてあるのだが、英語ではPortuguese Man O' War(「ポルトガルの軍隊」)っていう。マゼランが世界一周してから、ポルトガルが世界の海での発言権を増大させたのだろう。かれらの「キャラベル船」の三本マストとカツオノエボシの「烏帽子」がよく似ていたことからのネーミングだという。クラゲの類では珍しく海面にいる。が、遊泳能力はない。だから、帆が必要になる。
「カツオノエボシ」はそもそもが一個の生物ではなく、「超有機体」だという。幼態のクラゲと成熟したものとが群体になり、浮袋になるもの、帆になるもの、獲物を捕まえる触手になるもの、はては無風のときにオールになるものと役割分担する。これが帆に風を受け、ときには漕ぎ、食料を調達しながら、七つの海のどこにでも行ってやろうぜ!というヤル気満々に見える。
でも、繰り返すが彼らには脳がない。中枢神経もない。このいろいろとパーツの多い群体を統括・管理はどうやってやっているのか?
電気信号だという。オーケストラの演奏のように調和の取れたアクティビティを行うのだという。

インディゴブルーのこの「烏帽子」は海と保護色になって存在が解らない。触手の刺胞は相当にタチが悪い。群体が死んでも、刺胞は生きていて 毒針を発射する。『ターミネーター』のラストのように。

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