300ページの伝記の270ページ目を書け

問題:
 「ここにあなたの一生を書き綴った一冊の伝記があって、その総ページ数は300ページである。さて、その270ページ目にはどんなことが書いてあるだろうか。その『270ページ』一枚を書きなさい」

†アメリカのさる大学の出題である。これに対しての井上ひさしは次のようにコメントをしている。

ー1ページ分、なにか書かなければならないのだから、なによりもまず文章力が試される。
ー300ページのうちの270ページ目ということになれば、たぶん人生の終結部にあたるから、書き手は、かねてから考えている自分の将来像を、仕事から結婚を含めて、さらにはどんな家庭をつくり、どう子どもを育てるかもあわせて考えて、頭の中に作り上げなければならない。そしてその生き方がどんな人生の果実を結ぶかも点検しなければ、270ページ目は書けない。
ーつまり伝記の1ページを書かせることで、大学側は受験者に、これまでの総括と未来への展望を探らせている。


 (井上ひさし:『ふふふふ』)

†とてもソフィスケイトでインテレクチャルな奥深い出題だと思う。学生は全人格総出で書くことになるはずだ。大学の出題ってかくあるべきだと深々と思う。


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