精神の風が粘土の上に

【wording】

「精神の風が粘土の上に吹き渡るとき、初めて人間は創造される」

(サン=テグジュベリ) 


なんか格好いいんだけど、分かるようで分からなかった。
分からないようで、やはり分からなかった。

探すと、『人間の大地』の最後の最後のどん詰まりの一行であった。

なぜこのフレーズに流れ落ちて来たか?
その前の記述である。
サン=テグジュベリが汽車で三日間の長旅をした。暇なので、列車内をあちこち見て回った。
三等車両(昔はあった。飛行機で言えばエコノミー)には解雇されて(フランスから)故国に戻るポーランド人労働者がたくさんの乗っていた。

ある労働者の描写……まるで〝ひとかたまりの粘土のような人間〟。

かつては恋し合う同志であったのに、なぜこの二人が〝粘土のかたまり〟になったのか?
ある夫婦と小さなこども……〝かさばる古着の山のような二人〟から生まれた愛らしい息子。
こ、これは!「音楽家の顔だ。モーツアルトだ。すばらしい人生が約束されている」
……
この人たち一人一人のなかにいるモーツアルトを虐殺してはいけないのだ。

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これか!「粘土」なのか……「かさばる古着の山」か……。どこかに「鈍重」という単語も出て来ていたぞ。
お願いだ!「精神の風が吹き渡ってくれ」!
頼む!!びゅーびゅーと吹き荒んでくれ!

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