【ショート・エッセイ】
昨年の7月中旬。サンタモニカ海岸に面したホテルに数日逗留した。
部屋からは海が見える。むせ返るような日本の夏から飛んでくると、拍子抜けするぐらいに涼しい。
何日目かの朝。ロビー奥のコーヒーハウスで友人と一緒に朝食。何を頼んだかもう記憶が曖昧。多分、パンケーキとBLT、そしてオレンジジュースとコーヒーだったと思う。
さすがにここからは海は見えないが、まだ涼しい空気のなかを、南カリフォルニアのキラキラした光がそこいらじゅうに飛び散っていて、人を幸せにさせる。
友人とは他愛のないジョーク混じりを交換しているときに、その友人の背後にヌーと聳えている大型の霊長類がいる。
相当に老けて、背中もちょっと曲がっているが、紛れもなくアーノルド・シュワルツェネッガーだ。誰かと待ち合わせらしく一帯を見渡している。友人に〝後ろにシュワちゃんだよ〟と囁いた。彼が振り返るのが合図のように、前加州知事はのしのしと歩いてすぐ近くの待ち人の席に合流した。
シュワちゃんが言ったと伝えられる……
「恋愛は精神とやる気を削ぐんだ。人生で大事なことは?筋トレだ! 」
という言葉を思い出して一人で苦笑いしていた。
ボクのなかではやること為す事何一つ正しくないアントニオ猪木と彼は完全に被ってしまっていた。
脳の中に様々なフォルダがあるのだが、その中の一つに「なんやわからん」という表紙のものがあって、とにかく意味不明で、一所懸命解析するほどの価値もないと思われ、時間が勿体無いからとりあえず突っ込んでおくフォルダにしている。そして、早晩「ゴミ箱」にいく運命だ。
そこにシュワちゃんもイノキも入っている。
だが、知事としてパフォーマンスはそこそこに評価されているという。
ほほう!と思った矢先、そのゴリラは今度はラッパーになるんだと意気軒高らしい。
やはり、「なんやわからん」フオルダに入れておこう。
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