花嫁の付添人

 

アメリカ人と「フロンティア・スピリッツ」ってセットのようだ。
現にアメリカの歴史学者が……

「アメリカ人の知性の著しい特徴は辺境のお陰である」
 (フレデリック・ターナー: 『アメリカ史における辺境』)

と言っているくらいだ。 この「辺境」=「フロンティア」って、〝インディアンの掃討の最前線〟というのが原義であったワケで。そこを戦い抜いてインディアンの土地を「勝ち取る」のが「フロンティア・スピリッツ=開拓者魂」のことだ。
つまり、この「勝ち取る」とは〝生〟であり、「敗れる」はイコール〝死〟であった。それあるか、一般的に言ってアメリカ人は「勝ち」には大変に拘る。

 「……敗北がどんなに恥ずかしいことであるかは、いやというほど教えられている。(中略)そんなことをしたら人間のクズになる。なんの価値もない無用の男になって、笑いものにされ、いいようにこづきまわされる。アメリカでは勝たなければだめなんだ。それ以外に道はない」
(チャールズ・ブコウスキー短編集:『町で一番の美女』)

とブコウスキーが吐き捨てるように呻いているように、〝マッチョ信仰〟の通奏低音はこの国でいまだに鳴り続けている。

それでも、「良き敗者」=good loserとNo.2へ救いの手を差し伸べたりはするが、「花嫁の付添人」=bride's maidとおちょくることは忘れない。bride's maid とは花嫁の友達、姉妹などの未婚の女性が務め、花嫁の引き立て役。

1940年代から1960代の20年間 PGAツアーに参加したフレッド・ホーキンスというアメリカのプロゴルファーがいる。彼はその20年間で優勝は1度だけ。しかし、2位には19回もなっている。そのうち「四大トーナメント」において2位が4回(そのうちの2回はベン・ホーガンとアーノルド・パーマーに勝ちを譲っている。)
もはや、彼を「花嫁の付き添い人」と呼ぶのさえ憚れるほどだ。 シニアツアーにも参戦したが優勝はなかった。
引退前にインタービューされて、「確かに幸運に恵まれたゴルファーではなかった。でも、人生そのものには恵まれた。それがもっと重要なことだから」と答えている。 痛々しい。

ベン・ホーガンとアーノルド・パーマーの銅像はあるが、フレッド・ホーキンスの銅像はどこにもない。

 


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