岡康道回顧展


会社の先輩―後輩という枠は超えて、沢山話しをして来て、度々食事をして、ゴルフも何度も一緒にしてきた岡康道さんが63歳の若さで昨年亡くなった。
新型コロナで伸び伸びになっていたが、TUGBOARの主催で「岡康道回顧展」が青山「スパイラルホール」で10月20日―24日で開催された。
誠に素晴らしいプレゼンテーションであった。岡さんに対しての深い「愛惜」の情と残されて跡を引き継いで行く者たちの「気魄」が程よくブレンドされて、感動させられるクオリティであった。

 都合3度も足を運んだが、その内の一度は、岡さんが大学で一年間だけ非常勤講師をやっていた時の学生であった高木健太君と待ち合わせた。彼はその授業を受けて以来岡さんを「神」にしている。 岡さんが43歳くらいの時の生徒だった高木君は、今ではTUGBOATを立ち上げたその時の岡さんと同じくらいの年齢になっている計算にはなる。
高木君は今では「ライター」を職業にして活躍している。

彼は私とのそそくさとした食事を終えてから、6つも作ってあったコマーシャルのブース、さまざまな人々からの誄辞(るいじ)、岡さんの言葉展示ブースなどをたっぷり3時間は観て回っていた。予定していた大阪行きの新幹線をギリギリまで遅らせて。

 

■私がなかなかの見巧者と認めている高木君が採集してきた岡さんの言葉たちがFacebookにアップしてあった。

 ―「常に新しい作品を世の中に発信しつづけていくための秘訣は、『機嫌がいい』こと」
「どうしてわざわざリスクの大きい方を選んだかを考えると『ここで踏ん張れば、物語として劇的にはなるだろう』という」気持ちがどこかにあったからだと思います。」
―「変化は激しいほど面白い」
―「TUGBOATは『独立』ではなく『企画』」


 ※(高木君:)人生そのものが企画だった人の 全ての名言が、肉声で再現された。 出会えてよかった。本当にそうだった。

 ■私自身が初めて岡さんと仕事をしたとき、一番印象的であったのは〝なんてゴツゴツと抵抗感のあるコピーを書くヤツなんだ〟ということだった。人の予測を見事に外して、引っ掻き傷を作ってからちょっと離れたところへ着地する。 そんな観点から、私も数点選んで、iPhoneにメモした。

 ―「進学校のなかの不良でいたい。それが一番もてるんじゃないかと。」
―「企画は顔で通す。」
―「お前らが後輩でよかったよ。先輩たちだったら、大変だ。」
―「何年やっても、褒められるのが嬉しい。自分は卑しいのかもしれないが、もう仕方のないことだ。」
―『さよならをいうのは少し死ぬことだ』とレイモンド・チャンドラーは書いた。少しだけ死んで、また明日、仕事をしよう。4人で。

 ※「さよなら」を言うことは、相手の人生からちょっとの間「消えること」、つまり少しの間「死ぬこと」だって私立探偵フィリップ・マーロウ言っていたんだよね。

 少しの間だけって言ったじゃないか……。 岡……。


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