イギリスで「ユーモア」と言えば、それは天然自然に「ブラック・ユーモア」のこと。
ただ、イギリスのものは「自虐」が多いのでまだ許せるところはあるが、フランスの「エスプリ」というのは「他虐」に徹します。あの襲撃事件まで起こした風刺週刊誌『シャルリー・エブド』が正に「他虐」です。人質4人が殺されても、以前と同様の風刺をやってしまうのには、日本人はただただ降参だ。
アイルランドやイギリスの人は「ブラック・ユーモア」そして「皮肉」(3種類ほどもある)が文化とか教養の重要な部分を構成している。ギリギリのブラックを言い合って「腹を立てないゲーム」をやっているような人々だ。腹を立てたら教養がないとか、人としていかがなものかという社会です。
一時期、英国人と仕事をしたことがあるが、なにかにつけて彼が吐く嫌味な言辞がかなり気に障った。本当に「性格の悪い」ヤツと思ったが、それは彼個人の資質ではなく、彼らのカルチャーだったということが分かったのは随分とあとのことだ。
このブラックジョークの開祖と目されているのは『ガリバー旅行記』のジョナサン・スイフトというやはりアイルランドの血を引く作家だ。その伝統の筋目はバーナード・ショウに受け継がれている。
そのイギリス人から見ればアメリカ人のそれはスパイスが効いていないと言ってバカにします。
明治大学政治経済学部教授でアメリカ人の文学者のマーク・ピーターセンが日本に来て間もない頃、岡山県に赴き、小さな村の飲み屋に行ったときのこと。
『どうして東京から来たのか』と女性に訊かれて、
『この頃、サツがうるさくて、しばらく町を出ようと思って……』
とジョークで答えたところ、テーブルがシーンとし、
女性は彼の視線を避けて当惑したように店を見回しただけであった。
(『続 日本人の英語』:岩波新書、1990年 )
これほどにワクチンよりも毒が弱い「ブラック・ユーモア」でも、
日本人には免疫がないということです。
そろそろ日本のユーモアにもブラックが欲しいと思うのは、自分だけかな?
日本のユーモアってずっと「ボケ」と「ツッコミ」だけでいいのかな?
0コメント