【こんな話】
もうかれこれ30年にはなるアメリカ人の友人がいる。
出会った頃には作曲家をやっていたのだが、今では画家になってしまった。学校はペンシルバニア大学の「ウオートン」のMBAを出ているので、アメリカ人のなかでも人生を幾重に生きている人だと思う。
フランス、スペインなどでも暮らしたことがあり、世界中に友達がいるのだが、電話帳を一切持っていなかった。(今のようにスマートフォンのない時代だ。)全部覚えている……正確にいうと「フォトジェニック・メモリー」を持っていて、写真をとるように(「写メ」って言葉あったよね)前頭前野だかに焼き込んでいるのだという。
ビジネス・スクールの試験って相当に厳しいものだが、彼は試験前夜にテキストなどを【読む→写す】だけで済ませ、試験の時には“脳の中でページをめくり”、当該箇所を書き写すだけなんだよと言った。
そんなものがないこちらは驚愕しながら、
「へえ〜、便利なもんだなぁ。それがあればオレの人生も相当に変わったなァ……」
「いや、それだけのことで何も起きない。その中身は肉体化されないで、通過するだけなのだから」
と言って、物凄い暗い顔をしたので、その会話はそこで止めた。
それからちょっとして、ポール・ゴーギャンのように、それまで趣味していた絵を生業にするようになった。その懊悩があってのことじゃないかったのかなって思っている。
美人の中野信子さん、大好きです。脳科学者の中野さん。
「セクハラ、セクハラって騒ぐわりには、花を贈られて女性が怒らないのはなぜ?花って女性器でしょ?つまり、ラビア…… 」
(『情熱大陸』で:)
などと眼を剥くような事を仰る。彼女のIQは確実に148以上で、例のMENSAにも入っていたが、「こんなのクラスには一人くらいはいるもんで、“天才”呼ばわりされるのがおこがましいし、恥かしい」と言ってやめたらしい。
彼女は小学校時代、テストは大体は満点であった。90点だと気落ちしたと言っている。
ある日クラスメイトへ、
「先生が授業でやったものか、教科書に書いてあることからしか出題されないのに、みんなはなぜ忘れちゃうの?」
と言い放って、クラス全員がドン引きだったという。
つまり、彼女もこの「フォトジェニック・メモリー」を強く持っていたのだが、それは誰でも持っていると思っていたのです。「それをキチンと使わないのはなぜなの?」という疑問であったというんだね。
このフォトジェニック・メモリー」というのは子供の頃には誰でも持っているものらしい。
(研究によると、チンパンジーもこのフォトジェニック・メモリーを人間より高性能に持っている。サバイバルへの有力なツールなのだろう。)
サピエンスは長ずるに及び異なる種々のメモリーが「上書き」されて、フォトは隠れるもしくは失うらしい。
CPUの大きい前頭前野にはフォトジェニックも十分残るという身も蓋もなく寂しい話にはなる。
悲しいかな、ここでもIQというCPUの容量が問題になるらしい。その画家のアメリカ人も高IQの持ち主であった。
フォトジェニック・メモリー
砕け散ったプライドを拾い集めて
ことば、いい話、ワロタ、分析・洞察、人間、生き物、身辺、こんな話あんな話、ショート・エッセイ、写真、映像……など
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