【ショート・エッセイ】
薪が燃えているのをぼんやり見ているのが好きだ。家人にバカにされながらも、ストーブの前に座り込んでいる。
男は“火遊び“が好きだ。いやいや……秋の頃、落ち葉焚きを恍惚としてやっているのは例外なく男だ。これって何か男のDNAに書き込まれているに違いない。
「ホモサピエンスがまだ洞窟で暮らしていた頃の焚き火の跡が見つかっている。炊事に使ったのか?暖房に使っていたのか?どうも両方とも違うらしい。彼らは火に惹かれて、ペットとして洞窟へ持ち込みそれを飼育していたのだ」
とライアル・ワトソンが言っている。 『風の博物史』か『未知の贈り物』のどっちかだったけど。見たんかい?ソレを?って言いたい気分もあるけど、人類の素晴らしさを窺わせてちょっと震えるほど好きなフレーズだ。
でもね、ワトソンは言及していないが、若きホモサピエンスがその怪しくも美しいものを洞穴に持ち込んだとき、年老いたホモサピエンスが、
「そんなよくわからないものを持ち込むな。危ない!」
とたしなめたり、反対したに違いない。
そして若者は、
「うるへージジぃ!」だったに相違ない。
続けてワトソンはこう言っている。
「人類というのは、『やってみたいから』『魅力的だから』という理由だけで、自らの生活様式を変えてきた『種』だ。その最初の『冒険』が『火を飼う』ことであった」
このいわば「好奇心」の前には「老婆心」はひとたまりもなかったのだろう。
よく動物のドキュメンタリーを観る。チンパンジー、ライオン、オオカミctc. そこに登場する幼きものたちは『やってみたいから』『魅力的だから』ということにつき動かされて、よく遊んでいる。だが、彼らは一年も経たずに成熟することを厳しく求められるので、そんな遊びから早々に卒業する。
そこへ行くと、ホモサピエンスの子供は大人になるのに随分と時間が掛かる。近年では優に20年もしくはそれ以上は“子供“でいるワケだ。人類がこの地球上で大成功を収めた秘密というのは、この「子供の期間が長い」ということが大切なファクターだという。この長い期間での大いなる好奇心と豊かな想像力や創造力が我々の種族を食物連鎖のテッペンに押し上げ、霊長類の最上階に座らせたキーなのだ。
しかしですね。
『世界価値調査』などの国際比較でみると、最近の日本の20代は「創造的たること」でも「リスクを取る」ことでもとても低いスコアだ。(「瑞」はスイス)
衝撃的だな。 pic.twitter.com/JxTBaNe9ja
— 舞田敏彦 (@tmaita77) February 12, 2019
一説によると〝アメリカの老人のスコアが日本の若者のスコアと同じ〟だという。
ライアル・ワトソンンが言っていることを敷衍すると、日本は進化をやめて退化に入っているらしい。敗戦後の日本が政治・経済・社会・教育などでやってきた総決算がこうなんだら、仕方ないね。「以って瞑すべし」だ。
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