百々目鬼(ドドメキ)


5,6年前、ゴルフ場の風呂の脱衣場であった。〝やれやれ今日も大したことなかった……〟とシャツを乱れ篭に放り込んでいる時、隣の篭の人が着替えが済みかけていて、その彼のスポーツ・バッグの名札が見えた。「百々目鬼(+ファーストネーム)」って書いてあるが、どう読むのかな?それにこれなんだ?!

「あの〜なんとお読みするんですか?」
「ドドメキです」
「はあ〜?ドドメキ……。どちらに多いお名前なんですか?」
「茨城とか……」
「意味はなんでしょう?」
「ヨーカイです!妖怪。ガハハハ……」
と言って脱衣室から去っていった。

それから気になって調べてみた。
関山石燕という18世紀の妖怪画家の創作した妖怪じゃないかという疑いが濃いらしい。手が長く生まれた女がその手で人の銅銭(鳥の目のような穴あき銭なので「鳥目」と呼んだ)を度々盗み、その祟りなのか、その腕などに〝鳥の目〟が無数に現れた。

「どどめき」というのは流水や車馬のすすむ擬音語・擬態語として茨城や栃木などにあって、それに「百々目鬼」とか「百目木」という漢字を当てたものなのだろうという。

「百々目鬼」さんは全国に860名ほどいるらしい。お嬢さんには辛い苗字のような気もするが、アイデンティティはとても際立ってもいる。 

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