空蝉2019.11.04 08:15物置の裏手で滅多に行かないところに、網戸が放置されているのだが、そこに4匹の「空蝉」。蝉は地中で幼虫時代を木の根からの樹液を吸って過ごす。それも9年とか13年もの長い間。そして地から這いずりでて、最後の脱皮で空を飛ぶ。残された抜け殻が「空蝉」。そして慌しく異性を求め鳴き、卵を産んで死ぬ。その間わずか2,3日。なんという“人生”だろうか。 そんな無常とか切なさを感じてなのか、蝉の抜け殻ごときに昔の人は深く心を寄せる。 この「空蝉」に“この世の人”とか“人の生きている世”などの意味さえあるのに驚いた。それはどうやら古語の「現人(うつせみ)」という同音異義語を蝉の抜け殻に重ねているらしい。オシャレといえばオシャレ。哲学といえば哲学。「空蝉」と言えば、『源氏物語』の光源氏の女性のひとりの名前で有名である。小さくて痩せていて、それほど器量もよくない人の妻。物腰と気配がよかったと描写されている。その人妻は光源氏からの口説きに心を波立てながらも、その魔の手(もしくは愛の手)から逃れて、夫の任地に向かう。それにしても紫式部のネーミングのセンスは光る。自身のペンネームも含めて……。光源氏といい、藤壺、夕霧、葵の上そしてこの「空蝉」。“一度お会いしたい”と思ってしまう。そして会えば、“やはり……なぁ”と思うのだろうな。名前が予め人物描写を半分くらいはしているのだから。 この4匹は、ちゃんと遺伝子を繋いだのだろうか。地中のベッドに幼子を置いてきたのだろうか?0コメント1000 / 1000投稿2019.11.07 13:19陰翳礼讃2019.11.04 01:39学生のうちしか遊べない人生砕け散ったプライドを拾い集めてことば、いい話、ワロタ、分析・洞察、人間、生き物、身辺、こんな話あんな話、ショート・エッセイ、写真、映像……などフォロー
0コメント