反語としての「日本人は素晴らしい」

(丸山健二)

「ないから生まれるんだ。 中国人は道徳心が無いから儒教が生まれた。 日本人は勇気がないから武士道が生まれた。 アングロサクソンはずるいからフェアプレーの精神が生まれた」

SNS空間にアノーニマス(匿名)の名言が生まれることは〝稀によくある〟(ブロント語)ことだ。これも立派にその一つだろう。

誰だったかが、

「日本という国は英雄を作らなかったもしくは作れなかった国である」

って言っていたが、やはり我が民族は勇気の量に問題があるのかも知れない。

そんなとき、〝孤高の作家〟と言われる丸山健二が毎日新聞にインタビューされている記事が載っていた。(要所だけピックアップ)

https://mainichi.jp/articles/20190719/dde/012/040/002000c 


「もともと精神論だけで勝てると思い込んだ異常な国家で、戦争に突入し、己も敵も知らないから案の定、負けました。ところが、その際、江戸時代まではそれほど重んじられていなかった天皇を神様だと持ち上げた。生きた人間を現人神(あらひとがみ)と呼んだのは世界でも珍しく、それだけ狂信的な国だったわけです」

「死ぬのがわかっていて『バンザイ突撃』をしてくる国民だから扱いが大変だと、終戦後、日本に上陸した米軍が身構えていたら、手のひらを返したようにおもねる国民がいた。戦時中も捕虜になった日本の将校など、聞きもしないのに大事な話をベラベラ話す。もともと米国人があきれるくらい卑劣で愚劣で下劣な『三劣国民』なんです。その上、忖度が得意だから『三劣そんたく国民』です。だから『日本人の品格』なんてよく言えたもんだと思う。品格などこれっぽちもないのに、自分たちで持ち上げて『日本人は素晴らしい』という本やテレビ番組が量産されていますが、ダメなものはダメなんです」

 「今、日本人に一番欠けているのは自立の精神です。持とうともしないから、とにかく強い者の味方をする事大主義に陥る。それは主義というより、日本人の腐った根性ですね。どうも江戸幕府の400年ですっかり根づいた性根が遺伝的に染みついている。治りっこない」  

「1980年代ごろまでは日本経済も上り調子で、まだ米国に憧れているような無邪気とも思える明るさがあった。対して今は、『日本人に生まれて良かった』『日本はすごい』という表現をよく耳にするようになった。逆に、下り坂の暗い時代を象徴しているようにも思える」

(毎日新聞2019年7月19日 東京夕刊)

大振りのハンティング・ナイフで骨の髄まで刺し抜いてくる。

 「最高の愛国心とは、あなたの国が不名誉で、悪辣で、馬鹿みたいなことをしている時に、それを言ってやることだ」

と言っているのはイギリスの作家のジュリアン・バーンズ。

▶︎ジュリアン・バーンズはイギリス・イングランドの小説家。ポストモダン的と評される作風で、現代イギリスの代表的作家の一人として活躍している。

バカの一つ覚えの小汚い「自虐史観」の言葉で丸山の言葉を葬ることはない。

葬れば、未来を閉じる。



 


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