アイデンティティ

これを日本語では「自己同一性」と呼ぶ。つまりは「自分は何者か?」ということだ。 要するにIDカードの「ID」。

この「アイデンティティ」というコンセプトはアメリカの心理学者エリック・エリクソン(1902~1994)が、その生涯を通して自らの「アイデンティティ」に悩んだことによって生み出されたものというから、ちょっと驚いた。ギリシャの昔からあった概念じゃなかったのか?って。

エリクソンの生まれはドイツのフランクフルト。母親はユダヤ系デンマーク人で父親はドイツ人だった。だが、彼の風貌は父親には全く似ていなかった。キレイな金髪で明らかに北欧系の風貌を持っていた。それゆえに、母親が所属するユダヤ系社会からもその風貌から差別を受け、一方、父親が所属するドイツ人社会からもユダヤ人であるということで差別を受けて育った。 要するに、エリクソンの母親の結婚前の交渉によって生まれた子どもだったのだ。本当の父親はデンマーク人の芸術家(写真家)だったという風説がある。ちなみに、彼の晩年まで存命だった母親は、その真相を一切明かすことはなかったという。  

自らの出生の謎と生育期に経験した二重の差別によって、エリクソンは悩み葛藤し続けました。自分は誰で、その存在の根っこはどこにあるのか――? そうした疑問との格闘が、エリクソンを心的世界の探究へと向かわせたというわけだ。

1933年、ドイツでナチスが政権を掌握すると、エリクソンはデンマークを経由してアメリカへと渡り、アメリカでの国籍を取得。
彼が「アイデンティティ」の概念に行き着いた背景には、マサチューセッツ州オースティン・リッグス・センターにて同一性に苦しむ「境界性パーソナリティ障害」の患者に出会ったことが契機となったという。そこで彼は目覚ましく高い治癒率を挙げたという。

「凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない」(ウィンストン・チャーチル) 


 ※「境界性パーソナリティ障害」は気分の波が激しく感情が極めて不安定で、良い・悪いなどを両極端に判定したり、強いイライラ感が抑えきれなくなったりする症状を示すもの。

(完) 


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