カリフォルニア米


イネは一万年ほど前、中国は長江に沿った高温多湿な湖南省で人間の手に取り上げられたらしい。縄文末から弥生に掛けてどういうルートでか日本に齎されたという。とても効率のよい食料として「稲」「米」「飯」「苗」「籾」などいろいろな日本語とともに日本の主食になった。短粒のジャポニカ種も全く同様の気候風土を愛する。


それが、日本農民の努力により、北海道のような「北限」をはるかに超えた冷涼な地にでさえ、稲作を可能にした。
さらに高温ながら乾燥したカルフォルニアにも“大和農民魂”が「ジャポニカ」を定着させた。
いやいや、米作はカリフォルニア州のみではない。テキサス州、ルイジアナ州、ミシシッピ州、アーカンソー州、ミズーリ州でも為されている。これらの州では長粒のインデイカ種や中粒のカルローズ(カリフォルニアのバラの意)の栽培だろうと思うが……。

「栽培」とわざわざ使ってみた。日本人は米には特別の想いがあり、通常のものと言葉を違えて使う。「栽培」じゃなく「農耕」とか「稲作」という単語なんだろう。でも、アメリカでは他の野菜や穀類と変わらない。
LAのレストランでインディカとかカルローズ米が添えられて来ることが時々ある。でも、それはトウモロコシ、ポテトとかサヤエンドウの仲間でしかなく、ときには、ブロッコリーとコンビで登場する。つまり野菜の仲間……精々のところ穀類なんだ。これが日本人には落ち着かない。米はあくまでも主食で、主役か一目置かれるものでなきゃならない。時には神にさえ近い。

ロサンゼルスにいた頃はTAMAKI米にお世話になった。コシヒカリを田牧という栽培者が現地化したものだ。そのほかにも、日本のコシヒカリやササニシキをベースにブランドになっているものは近年増えたと聞く。
この街には寿司屋が多いが、寿司職人たちは、加州米が日本のものとまったく遜色がないと言う。

そして、このカリフォルニア米が西海岸の日本人、アメリカの日本人を下支えしているだけではない。世界中に流通して、日本の外で働く日本人を支えている。事実、ロンドンの駐在員もパリの駐在員もカリフォルニャ米を大いに頼りにしていた。セルビアのとんでもない田舎の揚水発電所のダムサイトに行った時に、東芝のタービンの老技術職人が、「カルフォル二ア米が手に入るんですよ」と相好を崩していた。

ジャポニカ種のカルフォニア米は日本のものより格段に安い。安いから世界的にも流通しやすいのだと思う。
日本政府はカルフォルニア米の栽培者たちに感謝状を贈って罰は当たらない。

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