落雷 2020.08.01 11:41「20代でかっこよく、30代で強く、40代で財産を持ち、50代で賢くなければ、つまりその人生は何でもない」 イギリスの俚諺だ。「スロットマシーンでジャックポットが4連続しなきゃダメか。そんな者いるか!?」と思った。ま、考えればイギリスのブラックなユーモアで言っているわけで、〝そうならいいが、そうではまったくないボクちゃん〟という自虐なのだと自らを納得させた。 だが、この通りの男が実在していたから世の中は分からない。 それが「岡康道」という男。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A1%E5%BA%B7%E9%81%93とにかくかっこいい。180センチを超える長身で、スポーツは野球、ハイジャンプ、アメリカン・フットボール何でもござれ、40代で独立・起業して社長。頭のキレも申し分ない。その上、人を蕩かす無類の愛嬌を持ち合わせ、話術の天才であった。こちらがチェッ!と嫉妬をするイトマさえ与えなかった。多くの女性の心を鷲掴みにしてしまうように、私自身が先ずほだされてしまっていた。全面降伏なのである。 案に相違して、彼の人生は平坦ではなく疾風怒濤の連続であった。その数々の〝悲劇〟を、座談の名人の彼はすべて〝喜劇〟にして笑って語ってくれた。兄弟・親戚の誰よりも、彼についての〝たくさんの物語〟を知ってしまっている。その彼が7月末日に突然に逝ってしまった。ウイルス性肝炎による多機能不全でワン・ウエイの旅立ちだった。 自分より若い後輩が先に逝くというのは、いつでもショックだ。だが、彼との交流は相当に濃かったので、ショックを超えて全身から力が抜け涙も滲んだ。 イギリス生まれのアメリカの詩人ウイスタン・ヒュー・オーデンが、 「死とは、ピクニックのとき遠くに聞こえる稲妻の音」 と言っているが、岡康道さんの死は私の足元直下に激しい火花とともに落雷した。 S・ジョブスへの誄詞(るいし)を作家で妹のモナ・シンプソンが贈っている。 「我々は皆――必ず最後には――道半ばで倒れるのです。物語の途中で。たくさんの物語のその途中で」 ジョブス の人生は誠に波乱万丈であった。実の妹モナ・シンプソンが25歳で、ジョブスが27歳の時にはじめて兄妹と名乗って出会っている。それを含めて波乱万丈の物語・ストーリーがジョブスには沢山あるだけに、この言葉がずっしりと来る。 岡康道さんも荒れ狂う海をタグボートという小舟で、自分にしか紡げない物語を確実に紡いできた。だが、志のある誰しもが〝道半ば〟では必ず倒れる。いや、志を維持し続けているからこそ〝道半ば〟と表現されて倒れるのだ。 ここ最近、岡康道さんは広告表現における「グル」(精神的指導者)になりつつあり、……いや、なっていたのだろう。彼の死はここにもしたたかな陥没を作ってしまったのだろうと思う。 今度会った時には、「人生はいつだってちょっとだけ間に合わないもんだよね」って笑い合いたい。それと「いやはや、それにしても見事な人生だよ」も加えて。 二人とも下戸だから、カンパリ・オレンジなどを前にして……。 Rest in peace!!! 0コメント1000 / 1000投稿2020.10.04 13:39貧乏な老人の楽しみ2020.07.24 05:32尊厳死砕け散ったプライドを拾い集めてことば、いい話、ワロタ、分析・洞察、人間、生き物、身辺、こんな話あんな話、ショート・エッセイ、写真、映像……などフォロー
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